炭水化物を摂らない人々
減量中のボクサーは、肉や卵などのたんぱく質をガンガン摂りながらも、激しいトレーニングで無駄な脂肪を落とし、筋肉モリモリに身体を鍛えて、試合に臨みます。このような高たんぱく質・低炭水化物の食生活では、簡単に体内の水分が抜けてゆき、血糖値も下がり、代わりに体内の脂肪を分解してエネルギー化してゆくため、体重がみるみる減少してゆきます。このダイエット方法を取り入れたスポーツジムが流行であるのも、納得がゆくでしょう。
このように、お米やパスタといった主食の糖質を控え、肉や卵を中心にした食生活に切り替える低炭水化物ダイエット。そのルーツを辿ってみると20年近く前にさかのぼり、これを発案したアメリカ人医師、ロバート・アトキンスにちなんで、「アトキンス・ダイエット」とも呼ばれています。アメリカで大流行しましたが、もともと米を主食とする私達日本人にはマッチしにくいものでした。そもそもステーキが大好きなアメリカ人のこと、肉を我慢する必要がない!として、人気に火がつきましたが、やはり問題もあったのです。実践者からは頭痛や吐き気、集中力の欠如といった副作用が報告されています。長期的にみても、動物性たんぱく質の摂り過ぎは心血管系や腎臓に悪影響を及ぼす可能性があります。現にアトキンス医師本人も、アトキンス・ブームのさなかの2003年、軽い転倒により亡くなってしまいました。
エコ・アトキンス・ダイエット
そこでこんにち、低炭水化物食と菜食主義(べジタリアン)の両者のメリットをミックスした、エコ・アトキンス・ダイエットに世界の耳目が集まっています。考え方のベースにアトキンス・ダイエットがありますが、最近のカナダ、トロントのセント・マイケル病院での研究では、たんぱく質を動物性ではなく、ナッツや大豆、アボカドやオリーブオイルなどの植物性たんぱく質へ切り替え、オーツ麦や大麦などの穀物、加えて野菜・フルーツなどを中心とする食生活が、体重減少にもっとも効果的であることが示されています。加えて、この研究では、炭水化物を完全に“ゼロ”にするのではなく、「炭水化物:タンパク質:脂肪」の比率を「25%:30%:45%」とし、前述のように、脂肪は植物性の良質の油脂とする、というところがポイントのようです。
さまざまなダイエット法が現れては消えてゆく昨今ですが、それぞれの方法にメリットとリスクがあることを認識し、自分に合ったダイエット法が何かを考えることは大切ですね。「炭水化物ゼロ!」や「肉ばかり!」などの、急激に体重を減らす極端な方法ではなく、穏やかに食生活を改善してゆくことが、長い目でみた場合、いちばんの健康法と言えそうです。