◆ 高血圧とその対策

「最高（最低）血圧」についての誤解
高血圧について考える前に、そもそも「血圧」とは何なのでしょうか。よく健康診断の結果などに、「最高血圧」と「最低血圧」とが併記されてあります。誤解されている方も少なくありませんが、これは「測定時間中に記録された血圧の最高値と最低値」という意味ではありません。そうではなく、測定された一回の心拍について、その瞬間の血管内圧力を計るものです。心臓が収縮すると、大動脈に血液が送り出されて圧力が上がり、これが「最高血圧」です。次に心臓が拡張すると圧力はゆるみ、これが「最低血圧」になります。ですから、血圧測定の結果の解釈には注意しなければなりません。それはたった一回の心拍について計っただけのものなので、誤差はかなり大きいと考えなければなりません。「高血圧」を判断するためには、何度も血圧を計って平均をとったり、さまざまなシーンや時間帯に計って総合的に考える必要があります。診察室でだけ血圧が高くなる「白衣高血圧」や、逆に診察室では異常が出ない「仮面高血圧」などの現象もあります。

なぜ高血圧は良くないのか
成人のもっとも望ましい血圧は、最低80・最高120（mmHg）以下だとされています（日本高血圧学会による）。もちろん低すぎる低血圧も問題なのですが、日本人には圧倒的に高血圧のかたのほうが多いようです。日本人の塩分摂取量が諸外国に比べて多いことも、その一因のようです。高血圧になると、川の水が岸辺の土地を削り取るように、血管の内壁が傷ついてゆき、その修復が繰り返されることで動脈硬化が進行します。動脈硬化は老化の一種なので、血圧が正常でも歳を重ねるに従って進行してゆきますが、高血圧の人は老化を速めてしまっている、と言えるでしょう。

高血圧はいろいろな原因が複合して生じます。逆にいえば、少しでも高血圧になりにくくなるようにする対策が、いろいろ期待できるということです。病的な高血圧には医師の治療と服薬が不可欠ですが、まだその程度まで進んでいない高血圧なら、生活習慣を見直すことで対策を取ってゆくことができます。

塩分を控えるにもコツがあります
第一に、塩分の摂取を控えることは重要です。塩化ナトリウムは人体には無くてはならない物質で、汗を多くかいた場合などにはむしろ積極的に補給したりもしますが、厚生労働省によれば一日の必要量は 1.5g にすぎません。5～6g 程度以下ならば理想的ですが、日本人は平均して 11～12g の塩分を一日に摂取しており、世界的にも塩味を好む民族だと言えそうです。減塩にも工夫の仕方があります。人間の舌は、食品の表面に塩分が多いとき、塩味を強く感じるようになっています。ということは、調理の時点では薄味にしておき、食べる段階になってから調味料などで表面に塩分を加えた方が、おなじだけの塩味を感じても減塩になっている、ということです。また、味噌汁などの減塩食品は積極的に利用してゆきましょう。

ミネラルを摂取することの大切さ
また、日頃から食事を通じて十分なミネラル、特にカリウムを摂ることが、高血圧対策にとても有効であると証明されています。カリウムは、バナナやアーモンドなどに豊富なので、多く食べるようにしましょう。サプリメントのカリウムには危険性があるため、おすすめできません。また、カルシウムを摂るのも必要です。

でも結局は、心の余裕？
食事以外では、ときに突然死の原因にもなってしまう、血圧の急激な変動を避けるようにしましょう。急激な温度変化や激しい有酸素運動は避け、何事もゆったりとした気持ちで行なうことを心がけるとよいでしょう。血圧には心理的なものの影響も強く見られ、怒ったり不安になったりすると、心拍数とともに血圧も上昇します。心や生活に、いつもゆとりを持つこと。ストレスを減らすこと。これがもっとも根本的な高血圧対策であり、今の日本人にもっとも足りていないものも、そうした心の余裕なのかもしれません。疲れたときにはよく休み、なにも考えずに散歩でもしてみませんか？